∫水玉模様の傘ものがたり。∫

 

塾が終わり、
すっかり暗くなった街に足を踏み出せば


頬を打つのは冷たい雫。



鞄の中に入れてきた折り畳み傘を探すけど、
見つからなくて。（そういえば、重いからって玄関先に置いて来たかもしれない）


空を仰いでため息一つ。

ポタリと雫が唇に落ちた。





雨水は屋根を伝い、地に打ち付けられて（その音色がキレイだと思った。）

街灯がぼんやりと濡れた路面を照らしていた。

黒いヒールが雨水に光る。






わたしは意を決して、


雨の中に踏み出そうと。



「何をしてる。」

不機嫌そうな あなたの声。



振り向いてみれば、



傘を脇に抱えたまま

ずぶぬれのあなたが。


（もともと無愛想な顔に、とびきりの不機嫌な表情を貼り付けて）








―馬鹿じゃないの。
傘くらい差してきなさいよ。

―阿呆。
こんな女物の傘が差せるか。










雨がきらいなあなたと。



相合い傘で帰るのもいい。