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私はあなたの止まり木でありたい。  どんなに強い鳥でも、羽ばたき続ければ疲れてしまうから。
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下校時刻を知らせるチャイム。

張り詰めた冬の空気に

その音が耳に痛い。




整然と並んだ机を前にして、

ため息をついて日誌を閉じた。


そもそも日番なんて二人でする仕事のはずなのに。

もう一人の当番である級友は

LHRが終わるなり数人の仲間と連立って

新しくできたクレープ屋さんに行くとかで帰ってしまった。






「ねぇ。」


前から二番目の窓際の席で

憎らしいほど安らかに

寝息を立てている男子生徒を揺り起こす。



「…ん。」


一瞬、眉根が不機嫌そうによせられて

青い夕暮れの中目覚める王子様。


「…下校時刻。」


あぁ、と小さく呟いて。

それでも彼は動こうとしない。



「ほら、帰るよ。」


買ったばかりのマフラーを首に。

教科書の詰まったカバンを持ち上げてもまだ動かない。



「ねぇってば!」

「見てたでしょ、昨日。」


ふと視線を落とせば、

いつの間にか体を起こして
頬杖をついた彼と目が合う。


「あぁ…あなたが下級生に手を出す瞬間なら見たけど。」



悪戯っぽい笑顔がなんとなく気に入らなくて

くるりと踵をかえした。







「手を出す、なんて言い方は心外だな。」







ガタンと音を立てて立ち上がって

あなたが私に追い付くまで

わざとゆっくり歩いてみる。




「ほらぁ、僕フェミニストだから。」

「タラシとフェミニストは違うんだよ、知ってた?」










初冬の寒さに身震いを一つ。


空には一番星。

いつからこんなに夜が長くなったんだろう。




「ねぇ、水香。」
「何。」
「12月25日って何の日か知ってる?」



ふと口を開いたあなたが

何を言いたいのかわかってはいたけど。



「…イエスキリストの誕生日。」




そう答えた時にあなたは

ただ少しだけ寂しそうに笑って


それ以上何も言わなかった。







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プロフィール
HN:
咲遊
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:

いますぐ引き返したほうがきっとあなたのため。


私の夢の世界


歪んでたり 痛かったり。



気分を害されても
責任は負えませんのであしからず。




ちなみに、
このブログ内の文章の

無断二次転載は禁止

です。(ないと思うけど)





それではどうぞ ごゆっくり。





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