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私はあなたの止まり木でありたい。  どんなに強い鳥でも、羽ばたき続ければ疲れてしまうから。
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ふわふわの薄いピンク

綿菓子のような毛糸。



「今年のクリスマスも一人かぁ。」




金曜日の6限目、

家庭科の授業中に聞こえてきた呟きにくすりと笑う。



「あーっ、笑ったなぁ!」

二本針を動かす手を休めてそちらを見れば、

頬を膨らませてこちらを見る麻緒と目が合った。


「いいじゃん、水香は彼氏いるんだからさー!」

「だから居ないって。」



パステルカラーの毛糸で何かを編むって、

女の子が一番女の子に戻れる瞬間なんだと思う。



「彼氏にマフラー編んであげるんでしょ?」

「まさか。ないない。」



いつもいつも、授業中に花が咲くのは恋の話。


こんな空間に男子の居場所があるはずもなくて

男子はグラウンドで
きっと体育の授業に勤しんでいるんだろう。




「私ね、ちょっと頑張って告白してみようかなって思って!」

突然の明姫の言葉に教室中がざわめき立つ。

「ちなみにお相手は?」

「おしえなーい!」



それが誰か、なんて

グラウンドに彼女が注ぐ視線の先を辿ればすぐにわかるのに。



「そういう明姫こそ、マフラー編んであげなよ。」

麻緒の言葉に、明姫が苦笑いをして膝元の編地を持ち上げる。

「…無理だね、それは。」


ガタガタの編地に再び盛大に吹き出せば

ひどい、と口を尖らせて。


「百絵ちゃん、作り目のしかたから教えて!」

「えぇっ!?」



ふと窓の外に目をやって、数人の仲間とじゃれている彼の姿を見る。


「大丈夫だと思うよ、明姫、マフラーなんか編まなくてもさ。」






ほら、彼ってフェミニストだから。






「だけど気をつけて、ね。」





でも同時に彼は詐欺師で。



あなたの大切なものを
堂々と奪い取っていくんだ。






意味がわからないと見上げてくる彼女に

小さく笑いかける。



「彼、マフラーも手袋も嫌いなんだ。チクチクする、って。」

そういうところはあの人にそっくりだなって思った記憶があるから

これは本当の話。





「編物できなくてよかったー!」

大きく万歳をする明姫を眺めながら、


もうすぐクリスマスだと思い出した。





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プロフィール
HN:
咲遊
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:

いますぐ引き返したほうがきっとあなたのため。


私の夢の世界


歪んでたり 痛かったり。



気分を害されても
責任は負えませんのであしからず。




ちなみに、
このブログ内の文章の

無断二次転載は禁止

です。(ないと思うけど)





それではどうぞ ごゆっくり。





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