私はあなたの止まり木でありたい。
どんなに強い鳥でも、羽ばたき続ければ疲れてしまうから。
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大好きだよ、水香。
許せないのは、愛しているから。
『兄さん…。』
電話越しの弟の声は、震えていた。
「藤也?」
『僕は…』
次に藤也が言った言葉に、俺は自分の耳を疑って。
「水香ちゃんが…?」
その時はただ純粋に、彼女が心配だった。
空港からタクシーに飛び乗って病院に向かいながら、
俺はひたすら祈っていたんだ。
―彼女が無事であればいい、と。
「兄さん!」
「藤也…」
息を切らして駆け込んだ病院。
廊下で俺は、初めて弟の涙を見た。
「水香ちゃんは…?」
藤也は黙って首を振る。
「目が、覚めないんだ。」
弱々しい声でそう言ったあと、藤也はその場に座り込んだ。
「…兄さん、」
髪に隠れた弟の表情は見えない。
でも、その声だけははっきりと聞こえた。
"もし、このまま水香が死んだらさ、"
― 僕 モ 、死 ヌ 。
「ふざけるな!」
静かな雪の夕暮れ、薄暗い病棟の廊下に、
俺の叫びだけが木霊した。
「どうしてお前が…」
「僕なんだよ、兄さん。」
胸倉を掴んで壁に押し付けた。
鈍い音と共に、俺を見上げた藤也は泣いてなんかいない。
「水香を突き落としたのは、僕なんだ…。」
その目はどこか遠くを見つめて、
何故か弟は笑っていた。
藤也を突き飛ばして、「面会謝絶」と書かれた扉を力任せに引く。
真っ白な個室のベッドに横たわる君を
今なら枕元の果物ナイフで刺せる気がした。
「やめろよ、兄さん!」
でも、まるで死んでいるように眠っている君を見たとき
俺は初めて、
君を愛しいと思った。
君は紗香だった。
踊れなくなった紗香。
藤也を傷付ける水香が憎い。
でも俺は、踊れない紗香が愛しいから。
「大丈夫だよ、藤也。」
自分の口許が緩むのを押さえきれない。
「…お前のせいじゃない。」
死ぬかもしれないね、水香は。
「…それなら、それでいいよ。」
俺の言葉の意味を取り損ねて、
訝しげに藤也が俺を見た。
踊れない紗香には死んで欲しくないけど、
でも
藤也、お前が傷付かないですむなら、それでいいよ。
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咲遊
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:
いますぐ引き返したほうがきっとあなたのため。
私の夢の世界
歪んでたり 痛かったり。
気分を害されても
責任は負えませんのであしからず。
ちなみに、
このブログ内の文章の
無断二次転載は禁止
です。(ないと思うけど)
それではどうぞ ごゆっくり。
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