忍者ブログ
私はあなたの止まり木でありたい。  どんなに強い鳥でも、羽ばたき続ければ疲れてしまうから。
[197]  [196]  [195]  [194]  [193]  [192]  [191]  [190]  [189]  [188]  [187
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



そばにいて。

どこにもいかないで。


一人に、なりたくない。





「ごめんね、なんか…僕の買い物に突き合わせちゃって。」

「いいえ!でも、意外でした。先輩がスパイ映画好きだったなんて。」


冬の夕暮れは早い。


空はもう淡い群青色で、街にはポツリポツリと灯が点りはじめていた。


「先輩、あの…」



私の手には小さな箱。



「あ、家に帰るまで開けちゃだめだよ。」



二人で立ち寄った小さな雑貨屋で、
アクセサリーの棚の前で数分、考え込んでいた彼。



男の子からプレゼントをもらうなんて初めてで

なんだか鞄の中にしまうのが勿体なくて

こうしてずっと手で握り締めている。



「気に入ってもらえるといいんだけど。」

「あ、これ…絶対大事にします、私!」



それに、この黄色のリボン。


私の好きな色、覚えててくれたのかな…先輩。








「…あれ?」


不意に、頬を伝う冷たい雫。

見ると、手元の箱も濡れていた。


「…天気予報って、こういう時だけ当たるよね。」


慌てて傘を鞄の中に探しても

まさか雨が降るなんて考えてもいなくて
それを玄関先に置いてきた自分に気付いた。


「送っていくよ。」


頭上に降り続いていた冷たい雨が、

パラパラという音と共に遮られた。


「風邪、ひかせたら大変だし。」


見上げた先には、傘を私に差しかけて笑っている先輩の顔。


「え、いや…その…」


だって先輩、


「僕と歩くの、そんなに嫌?」

「そういうわけじゃなくて!」


これって…


「だったらいいでしょ、お互い濡れずに済むんだから。」



そう言って、腕が肩に回された。





道行く人は足早に、私たちを追い抜いていくけど。


色とりどりの傘の模様を数えながら歩くのが、
こんなに楽しいなんて知らなかった。






でも。






不意に先輩が足を止める。

信号に引っ掛かった訳でもないのに。




ただ、ある一点を見つめて。

まるで無くした宝物を見つけたように。




私の肩に置かれた先輩の腕が、力を無くした。




「…水、香…!」




PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:

カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
フリーエリア
最新CM
[03/05 gregory]
[01/20 ぱど]
[01/19 あげたまご]
[01/18 あげたまご]
[01/14 さぁゃ]
最新TB
プロフィール
HN:
咲遊
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:

いますぐ引き返したほうがきっとあなたのため。


私の夢の世界


歪んでたり 痛かったり。



気分を害されても
責任は負えませんのであしからず。




ちなみに、
このブログ内の文章の

無断二次転載は禁止

です。(ないと思うけど)





それではどうぞ ごゆっくり。





バーコード
ブログ内検索
カウンター
カウンター




photo by MIZUTAMA
eternity labyrinth
忍者ブログ┼[PR]