∫キャンディーケーキは雪の中∫

「知ってるよ。」

いっそ死ねばよかったね。

「好きなんだねぇ、藤也のことがさ。」

私の存在が、みんなを傷付ける。


「あの程度の怪我で、踊れなくなるはずないだろ。」



二年前、

事故で私は階段から転落して

大怪我をした。



アキレス腱の断列と、左腕の複雑骨折、首を強打したことによる鞭打ち症。



間近に迫ったのバレエコンクールになんか、到底出られる訳がない。




それは、絶望だった。


もとの日常に戻れないことへの恐怖

夢が閉ざされてしまうことへの不安



「…ごめん。」



学校帰り、彼はいつも私の病室を訪れた。

その日の授業ノートとプリントを持って。



「ごめん、水香…。」




いつもいつも、彼は私に謝る。

でも私には、分からなかった。


どうして彼が、そうして私に謝るのか。











あれは、事故だったから。


彼は何も悪くない。










私が、足を滑らせて


藤也は私を支えようと手を伸ばしてくれた。



―それだけ。










「リハビリをすれば可能性はあったのに、

…君は嘘をついた。」








『藤也のせいだよ。』





『私はもう…踊れない。』






「思い出した？水香。」







君には自信がなかったんだ。


藤也を、好きな人を、
自分のものにする自信が。



「君は藤也の気持ちを踏みにじったんだ。」



そして結局は、
その大好きな人を傷付けた。


「許されないよ。」



紗香のように、
愛される自信がなかった。



「自分だけ悲劇のヒロインになるなんて。」



君はクララ。

金平糖になれるはずなんかないんだ。



「神は、見てるよ。」


―君の犯した罪も、ね。