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私はあなたの止まり木でありたい。  どんなに強い鳥でも、羽ばたき続ければ疲れてしまうから。
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公園へ向かう道を辿りながら、
思い出したように彼女が口を開く。



「水香さん、」

「何。」

「クリスマス会で私、クララの役をいただいたんですよ。」


チャイコフスキー作曲

『くるみ割り人形』



私たちのバレエスタジオでは毎年クリスマス会でこの演目を上演していた。



「良かったじゃん。」

「でも私は…水香さんみたいに金平糖の精がやりたかったなぁ。」



何気ない彼女の言葉に
曖昧に笑って目を逸らす。



彼女に悪気はないのだろうけれど。



「私がまだキャンディーケーキの役だった時の、水香さんの金平糖の踊りが忘れられなくて。」



遠い遠い昔に思える

私の最後の舞台の話。






クリスマスの夜に

クララにプレゼントされた
醜いくるみ割り人形は


悪い魔女に魔法をかけられた
お菓子の国の王子様。



クララは王子様を助けて

王子様はお礼の証に

お菓子の国にクララを連れていく。



金平糖はお菓子の国の女王様。

そこでお菓子の精たちの歓迎の宴が開かれて



やがてクララはその夢物語から目覚めるんだ。





「クララみたいに、クリスマスに素敵な王子様が現れたら素敵ですよね。」

「うん、そうだね。」




微笑んで頷いたけれど、




あなたが彼に出会ったのも

私が彼に出会ったのも


このクリスマス会だったんだよね。








公園のベンチに彼女を座らせて

小さな子供が砂場で遊んでいるのを横目に携帯を開く。



学校を出る時に藤也には、
公園で彼女を待たせているからと連絡をしておいた。



すぐ行くよ、との彼からの返信と共に


明姫からの着信が2件。






「もしもし?」


電話口から聞こえるのは

明るく弾んだ明姫の声。


「うん、そっか。おめでとう!」



空虚な"おめでとう"の言葉を繰り返す日常が

なんだか辛かった。




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プロフィール
HN:
咲遊
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:

いますぐ引き返したほうがきっとあなたのため。


私の夢の世界


歪んでたり 痛かったり。



気分を害されても
責任は負えませんのであしからず。




ちなみに、
このブログ内の文章の

無断二次転載は禁止

です。(ないと思うけど)





それではどうぞ ごゆっくり。





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