忍者ブログ
私はあなたの止まり木でありたい。  どんなに強い鳥でも、羽ばたき続ければ疲れてしまうから。
[127]  [126]  [125]  [124]  [123]  [122]  [121]  [120]  [119]  [118]  [117
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。









「何やってんの。」


彼の家のチャイムを鳴らそうとして

頭上の人影に驚いた。


「ん?あぁ水香いらっしゃ…」
「危ない危ない危ない!」


恐る恐る声を掛けて、

彼が満面の笑みで振り向いた矢先に
ぐらりとバランスを崩す脚立。


「あは、ごめんごめん。」


とっさに駆け寄って脚立を支える。

頭上の彼は笑っていた。



「脚立使う時は、誰かに支えてもらってないと危ないでしょ!」

「さっき水香、"危ない"って3回叫んでたよね。」



―だからこれで"危ない"って水香が言うの4回目。

そう言いながら四本の指を立ててみせる彼に

いつも通り盛大なため息を一つ。



「バカなこと言ってる暇あるならさっさとやれば。」

「はいはい。」



クスクス笑いながら、

腕に抱えていた大きなクリスマスリースをかける
彼の姿は毎年のこと。



「昨日、寝るの遅かったでしょ。」

目を細めてリースを眺めながら彼が言う。

「は?」

「だって今日は珍しく髪巻いてるから。」


髪を乾かさずに眠ったせいで

朝起きたら髪が跳ねていた。


気付かれないように、髪を巻いてきたのに。




「さすがフェミニストは鋭いですねー。」

「褒めてくれたと思っておくよ。」



注意深く脚立を降りてきて、軽々とそれを肩に担ぐ。




そういうところは

男なんだな、って思うけれど。




「とりあえず上がっててよ。僕はこれ、庭に置いてくるから。」


ドアノブに手をかけた瞬間、

背後で響く鈍い音。



「…馬鹿じゃないの。」



長い脚立の端を、思いきりブロック塀にぶつけたらしい。



「ごめん水香、やっぱ手伝って。」

「危ないから動かないで!」




二人で脚立を運びながら、

ふふ、と笑いを零した彼。




「5回目だよ、水香。」

「しつこい。」




クリスマスローズの咲く庭の隅。

揺れている小さなブランコでよく遊んだっけ。




「裏口から上がってくれる?」


白く塗られた扉が開いて

中から美味しそうな香りが漂う。


「母さんがジンジャーボーイクッキーを焼いてるんだ。」


楽しみにしてる、と呟いて。



「ビーズ持ってきたよ。」

「あぁ、ありがと。」




微笑んだ彼につられて

思わず笑った。




PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:

カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
フリーエリア
最新CM
[03/05 gregory]
[01/20 ぱど]
[01/19 あげたまご]
[01/18 あげたまご]
[01/14 さぁゃ]
最新TB
プロフィール
HN:
咲遊
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:

いますぐ引き返したほうがきっとあなたのため。


私の夢の世界


歪んでたり 痛かったり。



気分を害されても
責任は負えませんのであしからず。




ちなみに、
このブログ内の文章の

無断二次転載は禁止

です。(ないと思うけど)





それではどうぞ ごゆっくり。





バーコード
ブログ内検索
カウンター
カウンター




photo by MIZUTAMA
eternity labyrinth
忍者ブログ┼[PR]