∫キャンディーケーキは雪の中∫

藤也が恐ろしいのか静まり返った道場の中で
笑っているのは水香だけ。

「可愛い中1さんをいじめるのもよしたら？」

「部活中はルールがあるんだよ。」

「この子、私の弟なんだ。」

「…え？」

「…って言ったら、どうする？」


やがて彼の唇からクスリと笑いが洩れる。


「じゃあ水香がこの矢を射て、的のどこかにちょっとでも掠ったら許してあげる。」

「掠らなかったら？」

「3回チャンスあげるよ。」

「それでもムリだったら？」


腕を掴まれて

的の前に立たされる。



「射かたくらいはサポートしてあげるから。」

「無理、ダメ、絶対ムリ。」

そもそも素人にとって

矢を番えることすら難しいのに。


「大丈夫大丈夫。」

「ねぇ、だから掠らなかったら？」

「の時は僕の言う事聞いてもらうから大丈夫。」

「…ちょっと待って！っていうか何で私巻き込まれてんの？」



救いを求めて副将を見たが、
申し訳なさそうに手を合わせて謝られた。


「往生際が悪いよ、水香。」
「だって私関係ないでしょっ？」


本気でキレているらしい彼。


逃げられないと悟った。