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私はあなたの止まり木でありたい。  どんなに強い鳥でも、羽ばたき続ければ疲れてしまうから。
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彼の指先でねじ曲げられて

小さな車を象っていく針金を眺めていた。



「やめて水香、そんなに見つめられたら僕の手に穴開くから。」



相変わらず針金と睨めっこしたまま
彼が笑う。


「器用だなーと思って見てただけ!」


ハッと我に返れば

予想通り彼の口角は上がりっ放しだった。


「でも水香がそうやって見ててくれるなら、
これからずっと水香の隣で針金いじってようかな。」

「…勝手に一生やっとけば。」


くるりと背を向けて、
ジンジャーボーイクッキーを口に運ぶ。


「イタっ!」


手の部分に歯を立てた瞬間、
クッキーのものらしい声が背後から聞こえる。



「僕ノ右手ガ食ベラレタ!」


「私、もう帰るね。」


ポシェットを肩にかけて立ち上がれば、

降参だとでもいう風に手をあげる。


「ごめんごめん、僕が悪かったって。」

「その幼稚な嫌がらせ、いい加減やめたら。」

「ひどいなぁ!
僕はただジンジャーボーイ君の心の声を体現し…
あーっ、ごめんごめんごめん!」



再び無言で立ち上がれば、
流石に慌てたのか腕を掴まれた。




目の前には

ビーズでできた色とりどりの指輪と

彼が作った針金細工の山。




毎年恒例の
教会幼稚園のみんなへのプレゼントだ。





「喜んでくれるといいね、みんな。」

「うん、そうだね。」



笑って頷いてくれた彼は

やっぱり優しいんだと思う。










ふと目をやれば、

壁にかけてあるアドヴェントカレンダーが
クリスマスが近いことを告げていた。






「水香。」


針金細工の車が完成したらしい。

それをテーブルに置いた後、

彼はこちらを見なかった。




「…兄さん、26日に帰ってくるって。」



静寂が訪れた部屋に

明るい話題は探しても見つからなくて。




「…そっか。」






クリスマス前にはいつも

やけに饒舌になる彼の心に
少し触れた気がした。





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HN:
咲遊
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:

いますぐ引き返したほうがきっとあなたのため。


私の夢の世界


歪んでたり 痛かったり。



気分を害されても
責任は負えませんのであしからず。




ちなみに、
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無断二次転載は禁止

です。(ないと思うけど)





それではどうぞ ごゆっくり。





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