∫夜鳴き鳥が歌をやめる頃に∫

芳しく香る その着物の裾

ここは私の柩


愛するその人のために

身も心も焼き尽くしてしまいましょう。

さようなら 愛しい人


どうすれば
溢れ出すこの想いが あなたに届くのか。

私はその術を知りませんでした。



足りないのです どうしても。


愛していると囁いて

あなたを想って咽び泣き

汗ばんだ肌を重ねても


それは私をかき乱すだけ。




届かぬ言葉だけが
永遠に一人歩きをして

静かに冷たい朝に溶けてしまわぬように

私は此処を選びました。




熱く躯を這うこの緋色の炎は

あなたへの私の想い。


嗚呼 私はなんて幸せなのでしょう。

愛するあなたへの想いに灼かれて
散りゆくことができるなんて!



さようなら 愛しい人

聞こえています あなたの叫び

知っています あなたの頬を伝う涙

分かっていました

あなたが苦しむことくらい。



世の人々は
私を愚かだと嗤うでしょうか。


あなたの罪

わたくしの罪


全て全て

私が背負って参ります。




さぁ、

私の血にその手を浸して

私の屍を空に架けて


あなたの罪を清めてください。




さようなら 愛しい人

私を愛しく想うなら


どうか私を赦してください


苦しいのです
あなたが愛しすぎて

知らないのです
この滾らんとするあなたへの想い
どうすればあなたに報えましょうか


あなたという存在から

私を自由にして


あの大空に還してください。






さようなら 愛しい人

もしもあなたの中に

私という存在が在る場所があるならば


いつか黄泉平坂で

私の影を見つけてください。






嗚呼 苦しい。

何故でしょう。

私はこんなにも幸せなのに。

涙が溢れて止まらないのはどうして？







美しい 私の想い人

最後にその微笑みを私に―。