∫キャンディーケーキは雪の中∫

「藤也。」

大通りに続く細い道で

彼女が何かを思い出したようにこちらを見た。


「キャンディ、食べる？」

「いいの？」

「うん。」


白くてふわふわの鞄から

彼女が取り出した

白と赤のしましまキャンディー。


「キャンディーケーキの衣装みたいだ。」

「やっぱり藤也もそう思う？」


嬉しそうに笑って

はい、と手のひらにそれを載せてくれた。


「そうだ、藤也のために…」



雪はまだまだ降り続く。

辺りは真っ白で


その中に

君の白い背中が溶けてしまいそうで。



「ジンジャーボーイクッキーをね…」



僕の好きなものを、覚えていてくれていた。

そんな君が愛しくて。



彼女の手を掴もうとした。




「水香…。」



何が起きたのか、わからないんだ。





ただ、前のめりに僕の体は大きくバランスを崩して

彼女の手に触れようとした僕の手が


振り向きかけた水香の








その背中を―。














「…み、ず……か…？」





目の前に水香の姿はなくて。




石畳の階段の踊り場に、


君を、見つけた。












真っ白な雪の中

埋もれた君の白いワンピース

白いブーツの上にも雪は降り積もって。








僕の好きな色のリボンで

飾られた粉々のジンジャーボーイクッキー。



赤と白のキャンディーが






君を彩ってた。










そんな彼女を見て

僕は。






―綺麗だ、って。







そう、思ったんだ。