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私はあなたの止まり木でありたい。  どんなに強い鳥でも、羽ばたき続ければ疲れてしまうから。
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壊れていく

崩れていく。


ぜんぶ全部

僕のせい 君のため
―愛しているから






「藤也。」


名を呼ばれても、

決して振り返らない俺の弟。


「言ってくれないんだ、お前は。」

「…何を?」

「アメリカから一年ぶりに帰ってきたんだよ、俺は。」



俺に背を向けたまま、藤也は何も言わない。



「あぁ、お風呂行くならもうちょっと待ちなよ。多分水香がいるから。」


バッという効果音が付きそうなくらいの勢いで

藤也がこちらを向いた。


「ふーん。水香のことなら、ちゃんと反応するんだ。」

「うるさいよ。」


藤也がこちらを向いて

何かを言えば俺の勝ち。


「藤也。…水香のこと、好き?」


沈黙は大体肯定を表すっていうけど、

この場合もそうなのかな。


「…なわけないよね。だって藤也、彼女いるんだろ?
杏奈ちゃん、だっけ。」

「…僕、兄さんにそんな話した覚えないんだけどな。」

「水香がね、言ってたんだよ。」


ポーカーフェイスなんてお前の一番苦手な分野だろ。

分かりやすいよ、藤也。


「藤也には杏奈ちゃんっていう可愛い彼女が居て、幸せそうなんだ、って。
あぁ、関係ないか。ごめんね。だって水香は俺の…」

「黙れよ。」



ダン、と藤也が拳を壁に打ち付けた。


沈黙が耳に痛いほど響く。



「兄さん。」


やがて

顔を上げて俺の目を見る、





藤也は笑っていた。






歪んだその微笑みのまま


「おかえり、兄さん。」





そう言って

再び俺に背を向けた。




「母さんに言っとくよ。
…客間の用意は必要ない、ってさ。」





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プロフィール
HN:
咲遊
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:

いますぐ引き返したほうがきっとあなたのため。


私の夢の世界


歪んでたり 痛かったり。



気分を害されても
責任は負えませんのであしからず。




ちなみに、
このブログ内の文章の

無断二次転載は禁止

です。(ないと思うけど)





それではどうぞ ごゆっくり。





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